1985年に企業内研修を請け負う株式会社「香科舎」を設立し、2014年までの約30年間、職能別研修や階層別研修に携わってきました。
これまで行ってきた仕事は以下のような内容です。
- 各種研修プログラムの開発
- 企業内インストラクター育成研修
- マイノリティーリーダー育成研修
- 女性リーダー育成研修
- 就労支援研修
- パワハラ・セクハラ・エスニックハラスメント研修
- 人権研修及び、上記に関わる講演等の活動。
- 美容アドバイザー用の販売マニュアル・テキストと映像/化粧品
会社用 - 社内LANを使い、社員が自ら更新する販売マニュアル、商品マニ
ュアル/幼児用品業界用
詳しくはこちらをご覧ください。
また、以下のような教材の開発を行ってきました。
- 男女平等免許皆伝Ver.1 CD教材
- 男女平等免許皆伝 完全版/ 法律編&実践編
- クイズウルトラ人権100問(解放出版)
- ワンデイホームステイマニュアル
- WEBを使った自己学習 管理職検定プロデュース(にんげん出版)
- 差別語・不快語 (にんげん出版)
- 組織内コミュニケーションの手法(三菱総研) など
研修を請け負うにあたって心がけてきたことは、精神論に走ることなく、徹底したスキル研修を行うということです。
例えば、「挨拶」を教えるときは、元気よくとか、笑ってなどという教え方ではなく、「自分から先に」「相手の耳に届く声(音量)で」「体を相手の方に向けて」と、3つのポイントを繰り返します。
口ごもってしまって何を言っているのかわかりづらい受講生の時は、発声や活舌(かつぜつ)を教えます。口の開け方は、実は、他者とのコミュニケーションではとても大事な要素の一つです。同時に、活舌トレーニングで口の開け方がスムーズになると、表情も出てくる場合が多いのです。笑いたくても、筋肉が緊張していたら笑えませんから。
技術研修というのは、身につければその人の生きる力になるだけではなく、職場の空気も変わります。挨拶が日常的に飛びかう職場を想像してほしいのです。
そして、挨拶は、なぜやるのかというと、「私は、いま、ここにいます」「私は、いま、戻ってきました」「そこに、あなたはいますね」「私は、あなたを認識しました」と、お互いを確認しあう作業のなのです。
だから、「おはよう」には「おはよう」。「ただいま戻りました」「おかえり、お疲れさま」といったように、こだまします。それは、職場で一人にならないためにも、一人にしないためにも必要なことなのです。
どうしてって? 仕事は団体戦だからです。手を取り合っているからこそ、仕事が成り立つのです。
以下は、私の仕事観です。2016年にHPに掲載した文章です。
働いて、支えあって、生きる。
私にとって、「働くこと」は誇りでした。
働いてお金を稼ぐことは、そのまま「生きること」につながりました。
お金があれば、ご飯が食べられる。暖かい服が買える。電車に乗れる。病院にも行ける。その分だけ不安な時間が少なくなる。
その延長線上に、怯えずに生きられる「生活」が見えたのです。
働くことは、出会うことであり、学ぶことでもあります。働く技術は他者のためにもなり、社会に彩りをもたらしました。
しかし、いま、私たちの社会は、働いても十分な賃金を得られず、働くためのスキルを学ぶこともできない時代になりました。働く者ではなく、資産を持つ富める者ばかりがますます富んでいく社会となり、格差は広がる一方です。
本来、社会人として働く者には、その仕事が社会のためになっていることを確認し、収入を得て税金を収め、その税金が働くことさえ許されない人たちのために使われているかどうか、しっかり監視する責任があります。それが政治に参加するということです。政治とは、あなたが働いて収めた税金の使い方を決めることです。
私たちは、いま、資本主義社会に生きています。それは、どんなに気をつけていても、領土拡大によるマーケットの拡大という、戦争の火種を内在させている社会です。だからこそ、資本の暴走を防ぐために「労働組合」があります。
労働組合は、働く者すべてが正当な賃金を要求するための窓口でもあり、同時に、大切な社会資源でもあるのです。
経営者と労働組合が互いに切磋琢磨することによってこそ、職場環境が改善されるのです。そして、そのように頑張っている企業はたくさんあります。
企業とは、そこで働く労働者の生活を守り、地域社会に貢献し、その上で得た利益を株主に配当するものです。利潤追求だけが突出している企業は必ず滅びます。なぜなら、そこには「社会正義」がないからです。
だから、いまどんなに苦しくても、絶望しないで下さい。
遠慮せずに、求められる助けは求めて下さい。
一人で抱え込まないこと、助けを求められる力をつけることが、「大人」になるということです。
一緒に働いて、支えあって、生きていきましょう。
今までに、研修の仕事をやめようと思ったことが2度ほどありました。
一度目は、バブルがはじけて、「研修」そのものがリストラや嫌がらせの手段として使われるようになったときです。
十数年研修を一緒にやってきた、ある商社の人事部の部長らが、新人研修で最前列に座らされていました。そして、この会社を併合した企業から経営陣が送られてきて、研修冒頭の挨拶で「この会社には古い体質が残っている」と言いました。
見せしめでした。
非情だと思いました。
二度目は、研修でスキルアップした女性たちが、いつまで経っても正社員になれず、十年売上を上げ続けても給料が上がらなかったときです。当時、受講生だった非正規の女性たちと、同期入社の男性正社員との賃金格差は、2倍以上ありました。
もちろん、外部講師としては、クライアントである企業の人事に口を出すことなどできません。しかし、企業の利潤のためだけに研修を行いたくはないのです。
企業は、株主の利益だけでなく、労働者の利益、地域社会の利益も考えてこそ、真っ当な企業と言えるからです。
ごく一部の人が利潤を追求するための手先にされるような仕事は、精神的にしんどいのです。しかし、バブル崩壊後は、企業の体質や古い文化が、一斉に湧き出てきた感じでした。貧すれば鈍するとはこういうことかと思いました。
同時に、労働組合の女性差別的な対応にも、がっかりでした。
例えば、組合での研修時に、妊婦も参加しているのにタバコを吸う人たちが一杯いたり、女性を責任ある業務につかせず雑務ばかりさせている様子を見るのは残念でした。
ある知人の企業では経営陣の方がはるかに先進的で、労組が「男性にも育児休暇を一か月」と提案したのに対して、「育児が一か月で終わると思いますか?それに、育児だけではないでしょう。家族のさまざまな状況に応じて、その人に必要なだけ休暇を取れるようにしてくれと、どうして提案しないのですか?」と問い返しました。この様子を見て、ああ、これでは労働組合の意味がないなぁと思ったほどです。
差別をなくして、国際競争に打ち勝とうとしている企業人もいます。
過去の古い体質に対して、それぞれの能力を活用しながら、多様性をもってマーケットを獲得していく手法は、韓流ドラマの「梨泰院(イテウォン)クラス」(2020年 ネットフリックス配信 パク・ソジュン主演)がわかりやすいです。
大企業の中で働くことの葛藤を垣間見るには、日本でも何度も放送されたイム・シワン主演の「ミセン(未生)」(2014年)が、その切なさを伝えてくれています。
いずれも、男性の社会上昇を描いたものという限界はありますが、世界的に共通する課題をあぶり出しています。
私は、2014年に会社を退職し、フリーになりました。
企業内研修に絶望したわけではなく、これからは、必要な人に必要なスキルを届けていきたいと思っています。
インターネットの時代は、それが可能になりました。ZOOMやSNSを活用しながら、組織の中にいない人にも、働く上で必要なスキルを、オンラインで可能な限り提供していきたいと思っています。
これから研修業界で働こうとするマイノリティの方へ
働いていれば、嫌なことは多々あります。
自分の悲しみを肩代わりしてくれる人はいません。
むごいようですが、耐えるしかないのです。
思い返せば、仕事先で「講師があちらの方とは思いませんでした」と不愉快そうに言われたことがありました。老舗の料理店で、着物を着て接客する各店舗の女性リーダーたちへの研修でした。通常の配膳スキルに加えて、和服での所作を教えなければなりません。そこに、明らかに日本人らしからぬ名前の人がきたのですから、困惑したのでしょう。
また、あるコンサルタント会社の下請けとして企画書を出したとき、「(提案者名を)日本名にしてくれないか」とも言われました。
博報堂の特別宣伝班に在籍していた時は、周囲はすべてプロフェッショナルでしたので、企画が決まればその後の作業は迅速に進みました。しかし、独立して仕事をするようになると、プロと連携して仕事をするのは困難になります。それなりのギャラを払うことができないだけでなく、スケジュールを押さえることも難しいのです。また、大企業の看板がなくなれば、捨て台詞も吐かれるし、踏み倒しをされることもあります。
そこに、「女性」で「非日本人」となると、困難はさらに増します。
日本の男女平等指数は世界121位(2020年)で、ジェンダー・ギャップは先進国中最悪です。
しかし、あきらめないでください。
経済合理性をきちんと考える企業の担当者も少なくありません。
1985年当時、私に最初に仕事をくれた大企業は「東芝」でした。そのときの担当者は「研修がうまいんだからいいじゃないか」と私を使ってくれました。その後、イントラを活用したマニュアル制作の仕事を請け負いました。
1999年に東芝の顧客クレーム処理を端緒として起きた「東芝ユーザーサポート事件」は、インターネット時代を象徴する事件でしたが、後に記者会見をした東芝の社長が「わが社にはきちんとしたマニュアルがある」と発言したそのマニュアルは、事件以前に私たちがショールーム運営のために作っておいたものでした。
その後、そのマニュアルをベースに作ったものが本社でも活用されることになりました。
いやなことはどこにでもあるが、良心ある人は必ずいます。
そして、仕事は、自分一人ではできません。仕事を分かちあうことで、人とのつながりが広がるのです。同業他社はライバルではありません。研修スキルは、年々進化しています。コンサルタント業務も、マーケットの変化と共に日々刻々と変化しています。同業者と仲間になり、情報を共有し、仕事を分かちあう先に、経営の安定があるように思います。
私たちが住む社会をよりよくするために、なにができるか、その中の一員であるという自負をもって、仕事をしてみてはどうでしょうか。
最後に、私が仕事をする上で自分に与えていたミッションについて。
Mission:ダイバーシティ(diversity・多様性)
「多様性」というセーフティネットの構築、そのために、多様性のある社会、多様性のある職場、多様性のある働き方の実現に必要な「技術」と「情報」を提供していきます。
国際化社会とは、多様性を認め合う社会であり、互いの文化や価値観の違いを調整しながら、共に生きていく社会のことです。
企業における人材育成とは、組織維持の基本である「他者とともに生きていく力」を育むものなのです。そして、それぞれの個人が持っている多様な能力を発見してあげる営みが教育であり、その能力を最大限に活かすマネージメントが人事なのです。
これまで人々は、ひたすらマーケットの拡大を目指す経済の暴走と、単一思考の政治の暴走を食い止めることができず、「戦争」「殺戮」という未曾有の悲劇を繰り返してきました。そうした暴走を支えたのは、自民族優越主義という、他者を劣ったものとみなす「差別心」でした。
戦争の世紀を経て、人々は、互いに他者の価値を認めることこそがセーフティネットであり、社会の発展のあるべき姿であることに気がつきました。
世界の人々の慟哭の積み重ねの上に、今の私たちの豊かさがあります。
私は、研修という技術をもって、平和で豊かな生活を夢見ながらそれを手にし得なかった先輩世代の歴史に、応えたいと決心したのです。
Mission: Diversity
I strive towards the realization of a prevailing security and stability for all members of society marked by prevailing diversity that is live, celebrated and treasured by all. To that end, we will actively disseminate critically relevant tools and information necessary to create a society, workplace and institutional culture that fosters and honors genuine diversity.
“Internationalism,” a term increasingly popular today in Japan, is only possible when diversity is honored in practice – that is, to respect each other’s differences in cultures and values and thoughtfully wherever they may arise.
Human resources development in the corporate sector is aimed at strengthening precisely one’s “ability and capacity to live with those with differences” – one of the core elements of a sustainable institution.
Education is to nurture one’s ability to ‘discover’ the myriad talents and gifts possessed by each and every individual, supported by the very purpose of ‘personnel,’ in which management strives to wield all resources and tools at its discretion towards that specific end.
To date, we human beings have unsuccessfully attempted to halt the destructive path of a narrow-minded political leadership set on the expansion of the market, wreaking havoc through repeated ‘wars’ and ‘genocide’ as well as other unspeakable atrocities in the process. It is with the prevailing reign of a certain supremacist ideology that underlines the perpetual tendency to deem ‘the other’ as inferior, and therefore, quite naturally, legitimately less influential in decision-making that determines history’s outcomes.
Reflecting on this past century of wars, I have no doubt that we today recognize more clearly than ever before, that a genuine social ‘safety net’ is made only possible when equity among all peoples is realized, forming the solid basis from which all social progress must begin.
The tremendous wealth which surrounds us today is a product of an accumulation of unheard, and untold, sufferings of peoples from around the world.
Therefore, with the tools for ‘training’ and ‘professional development,’ I set out to honor the very history of those faceless and nameless predecessors of our time who could only touch the wealth in their dreams – so that our future generations can dream their dreams in a genuinely wealthy world – one of shared abundance and prevailing peace.
Mission:다양성 (diversity)
우리는 ‘다양성’ 이라는 안전망 구축을 목표로 하고 있습니다 . 그를 위해서 다양성이 있는 사회 , 다양성이 있는 직장 , 다양성이 있게 일하는 방법 등을
구현하기에 필요한 ‘기술’ 과 ‘정보’ 를 제공해 드리겠습니다 .
국제화란 다양성을 서로 인정해 주는 사회이며 서로의 문화나 가치관의 차이를 조정하면서 함께 살아갈 수 있는 사회를 의미합니다 .
기업에서의 인재육성이란 조직 유지의 기본인 ‘다른 사람들과 함께 살아가는 힘’ 을 키우는 것입니다. 그리고 각 개인이 가지고 있는 다양한 능력을 발견해 주는 활동이 교육이며 그 능력을 최대한 살리는 매니지먼트가 바로 인사입니다 .
사람들은 그동안 오로지 시장 확대를 목적으로 하는 경제적 폭주와 단일 사고인 정치적 폭주를 막아내지 못하여 ‘전쟁’ 과 ‘살육’ 이라는 미증유의 비극을 되풀이해 왔습니다 . 그러한 폭주를 지탱했던 것은 자기민족우월주의라고 하는 , 타자를 뒤떨어진 사람으로 보는 ‘차별심’ 이었습니다 .
전쟁의 세기를 거쳐 사람들은 타자의 가치를 서로 인정하는 것이야말로 안전망이자 사회 발전의 진정한 모습임을 깨닫게 되었습니다 .
세계 여러 사람들의 통곡의 축적 위에 지금 우리의 번영이 있습니다 .
우리는 연수라는 기술을 통해서 평화롭고 풍요로운 생활을 꿈꾸면서도 그것을 얻을수 없었던 선배 세대 역사에 보답하자고 결심한 것입니다 .
Mission:多样性 (diversity)
我们是以号称 diversity (多样性)的安全保障制度的构筑为目标 。 为此提供为了实现具有多样性的社会,多样性的工作单位,多样性的工作方法所需的 “ 技术 ” 与“ 情报” 。
所谓国际化是 指 互相认可多样性存在的社会,在调整彼此之间的文化及价值观的差异中一起生存的社会 。
所谓公司单位的人材培育,则是在于培育维持组织的基础 :“ 和其他人共存的力量”。
而且, 所谓教育,则是个去发掘各个人所具备的各式各样的能力的工作 。 将这些能力有效地运用到经营上至最大限度则是人事管理 。
至今尚无法阻止人类一昧地以扩大市场为目的而朝向经济的无序发展及单一思考的无规范政治,人类历史重复着“战争”“屠杀”的空前悲剧。歧视他者的 “ 自民族优越主义 ” 助长着这种失控的发展 。
经历了战争的世纪,人类觉醒到与他者互相认可彼此的价值才是安全保障制度 , 社会发展所应有的状态 。
现今我们的富裕的生活是构筑在世界人类慟哭的累积上的 。
本组织决心以研修这个技术,去回应上一代先人们梦寐以求丰裕的生活却未能实现的历史 。